今回のテーマは『野良猫を飼う』ということについて質問をいただいたので、答えていきたいと思います!
はじめまして。50代の主婦をしているSと申します。子どもたちも独立し、最近ようやく自分の時間が持てるようになりました。
そんな折、家の近所にずっと姿を見せていた野良猫が、ここ数ヶ月でだんだん私の庭に来るようになり、今では庭先で寝転んだり、ごはんを食べるようになりました。だんだんと愛着が湧いてきて、「この子を家に迎え入れてあげたい」と思うようになったのですが、これまで動物を飼った経験がなく、不安もたくさんあります。
野良猫って本当に家猫になれるんでしょうか?それに、保護する前に病院に連れて行った方がいいのか、家に迎える準備として何が必要なのかもわからず、どう動いていいのか迷っています。
うちにはそろそろ70になる夫もいますし、近所付き合いも昔ながらの地域なので、周囲の目も少し気になるのが正直なところです。でも、できればこの子に安心できる居場所を作ってあげたいんです。こんな私でも、野良猫を飼うことはできるでしょうか?
街中や住宅地で見かける野良猫。その愛らしい姿に心を奪われ、「飼いたい!」と思う方も多いですよね。野良猫を保護し、家族として迎え入れることは、猫田助でも大切にしている命を救う大切な行動の一つです。
しかし、今回のSさんのように野良猫を飼うことには責任が伴い、周囲の理解も少なからず必要となります。
どのような準備をしていけばいいかと迷ってしまうこともあると思うので、野良猫を迎える初心者向けに、保護方法や飼育のコツ、心構えについて詳しく解説します。
野良猫を家族として迎え入れたいとお考えの方は、ぜひ最後までお読みください!
妊婦猫や、子猫の場合、保護・捕獲方法が異なるので、こちらの記事を参考にしてください。
野良猫を保護する前に

野良猫を捕まえるっつてもよ、その前になんかすることはあるのかい?
まずは野良猫を家族として迎え入れる前にしておきたい準備についてお話します。
本当に野良猫か確認する
野良猫を保護して飼いたいと思った場合、まずその猫が本当に野良猫かどうか確認することが重要です。
猫のライフスタイルを調べる
まずは猫ちゃんの生活をよく観察してみてください。
- 近くに家族となる猫がいないか
- 首輪をしていないか
- どこかで餌をもらっていないか
- 体が清潔であるか
首輪をしている場合や、体が清潔で人に慣れている様子がある場合は、飼い猫や地域猫の可能性があります。
家族がいる場合、もし子どもがいたら、その子も一緒に面倒を見ることになるかもしれないので注意しましょう。
迷子猫かどうか調べる
次は迷子になっている猫でないかを調べます。
飼い主さんがその猫ちゃんの所有者なので、確認をするのが非常に大切です。
子猫の場合は、母猫が誰かの飼い猫である可能性もなくはないので、SNSとかインターネットで検索してみましょう。
基本的には自分の住んでる『市町村』+『迷子猫』などで検索(SNS含む)し、似たような猫ちゃんの情報が載っていないかを確認してください。
- ◯◯市+迷子猫
- ◯◯市+迷い猫
- ◯◯市+迷子猫+掲示板
- ◯◯市+迷子猫+情報
- ◯◯市+迷い猫+保護
ネット以外にも地域の掲示板や、近隣の動物愛護センターへ確認することも大切です。
飼い猫を譲渡したり、捕まえて家猫にしてしまうと法に触れる可能性があるので注意してください。
↓から実際に検索できます。



保護する前にチェックは必要だね



泥棒扱いされたら困るものね〜。
猫を迎える覚悟と心構えを持つ
猫を飼うことは人生で10年から15年以上の責任を背負う覚悟が必要です。野良猫を保護するということは、一般的な飼い猫よりも手間や費用がかかる場合が多くあります。
例えば、保護後には動物病院での健康診断やワクチン接種、必要に応じた避妊・去勢手術を行う必要があります。野良猫は一般的な飼い猫より体力がなく、寿命が短い傾向があるので、その辺りも承知しておく必要があるかなと。
また、野良猫の場合は最初のうち人馴れしておらず、忍耐強く接しなければなりません。「飼いたい」という愛情だけでなく、時間や金銭的な負担を考えた上でしっかりと覚悟を固めてから保護を検討してください。



最初から人に馴れているなら安心ね。



病院に行けば何歳なのかも分かるわよ!しっかりチェックしてよね!
先住猫、他の動物の接触を避ける
野良猫を保護する際、すでに先住猫や他のペットがいる場合は、最初は接触を避けることが大切です。野良猫は外で生活している間に、さまざまな感染症や寄生虫を持っている可能性があるんです。
気をつけなくてはいけない病気はいくつかあります。
- トキソプラズマ
- Q熱
- ねこひっかき病
- ノミ・ダニ
- ノミ・ダニ
- 猫エイズ、猫白血病
- パルボウイルスなどウイルス性の病気
特にトキソプラズマは妊婦さんが触れると胎児に影響があり、人命に関わるので触らないように気をつけてください。
そのため、健康診断を受けるまでは別々の空間で過ごさせましょう。



人間にも伝染る可能性があるんだね!



すでに猫を飼っているなら、隔離などをして慎重にならないといけないわ。
家族や、周りの理解を得る
家族の理解を得る
野良猫を保護する際には、必ず家族の理解と協力が必要です。猫は愛情深い動物ですが、その分世話が必要となる場面も多いです。
例えば、定期的なエサの準備やトイレの掃除、それに伴う家の衛生管理などが挙げられます。また、家族が猫に対してアレルギーを持っていないかの確認も大切です。
今回のSさんのように旦那さんが猫に愛情を持ってくれるかは別の問題ですので、保護する前にしっかり家族内で検討を重ねたほうが良いかと思います。
また、今回は旦那さんが70になるとのことで、高齢での迎え入れです。この場合は、息子・娘、いないのであれば親類に万が一の時は世話を頼むなど、了承を得ておくことが一番重要かと思います。
近所の理解を得る
他にも家と外を行き来するような生活にさせたい場合は近隣トラブルも起こる可能性があります。
下記は平成22年の内閣府による『動物愛護に関する世論調査』の報告書です。
ここでは、飼い主のマナーが悪い、猫が糞尿をしていく、鳴き声がうるさいなどが挙げられています。
「動物愛護に関する世論調査」の概要(12ページ) – 内閣府
周囲に関しては完全室内飼いにしたり、隣と1キロ以上離れているような田舎であれば大丈夫かと思いますが、基本は室内飼いにすることを検討してください。



飼い主に迷惑かけちゃうのは嫌だなぁ



猫アレルギーを持つ人は結構いるから注意しないといけないぞ。
野良猫の保護(捕獲)方法



野良猫の捕獲なんだけどよ、どうやって捕獲したらいいんだい?
野良猫を安全に保護するためには、専用の捕獲器を用意することをおすすめします。捕獲器は猫に触れずに安全に保護できるため、猫を驚かせたり、怪我をさせたりするリスクを最小限に抑えられます。
捕獲器はホームセンターやオンラインショップなどで購入可能で、価格はおおよそ5,000円~15,000円程度で売られていますが、猫相手にはこのレベルの捕獲器で十分ですね。


ただ、かなり大きい猫の場合は、体当たりで逃げられてしまう可能性もあるので、もうちょっとしっかりした捕獲器を使いましょう。


1回しか使わないかもしれないし、どういったものを買ったらいいのか?迷ってしまう場合は市区町村、動物病院、動物愛護センターで捕獲の際の貸出を行っているところもありますので、まずは相談してみましょう。
もっと詳しく猫の捕獲方法や、コツを知りたい方は野良猫を救いたい!保護の流れと初めての対応策の記事をご覧ください。





捕獲器ってつい騙されて入っちゃうんだよねー!



捕まえられた時は焦っちゃうけど、別に痛くなかったし、この方法はお互いにとって安全ね。
野良猫を保護したらまず最初に行うこと



野良猫を保護できたぜ!じゃあ、まずは病院に連れていくでいいんじゃねぇか?
野良猫を捕獲し、いよいよ一緒に暮らせる!ということにはなりません。
最初に病院に行くのも良い選択ですが、人馴れしていなくて元気な場合は家猫に迎え入れるためにも、もう少しゆっくり距離を詰めるほうが良いかと思います。
人馴れしていないと病院で暴れて診察してもらえないケースもありますし、病院がトラウマになって中々、心の距離が縮まらないということもあり得るのです。
そのため、病院に行く前に迎え入れるための準備を整えておきましょう。
飼育環境を整える
野良猫を保護した後、最初に行うべきことは、適切な飼育環境を整え、猫ちゃんの心を落ち着かせることが重要です。


暴れている場合は、捕まえた初日は捕獲器の中でだんだんと生活に慣れていくほうが無難です。ケージは、捕まえた時点ですでに人馴れしてたり、猫が慣れてきたりというように段階的に解放していくほうが良いかと思います。
先住猫や、他に飼っている動物がいる場合は少しかわいそうですが、隔離しておくとストレスが少なく、感染症の危険も最小限に抑えられます。



安全面も考慮して最初は慎重にね。



捕獲器からは早く移りたいね〜
人馴れさせるためのアプローチ
暴れていたり、あまり心を開いていないようであれば、捕獲器やケージの中で落ち着かせる方法が良いと言いましたが、この時、無理に近づいたり、ちょっかいを出さないようにしましょう。
基本的に猫は気持ちが高ぶっている時は触らないほうが好印象を持たれます。
2〜3日も経つと段々、気持ちも落ち着いてくるので、この辺りでケージ越しに話しかけたりするようにします。
シャーと威嚇してきて手を出すのは危ないけど、どうしても距離を詰めたい場合は孫の手を使う方法がオススメです。




これらのステップを丁寧に行うことで、猫が「人は怖くない存在」と理解し、飼い主との生活に馴染むことが期待できます。焦らずに時間をかけることで、人馴れを一層スムーズに進められます。
この辺りの詳細なアプローチ法は臆病な猫の飼い方。猫と仲良くなる5つのコツをご覧ください。





怖いと思ったら本能的にシャーってやっちゃうんだよね〜。



危ないと思ったら無理に触らないのが大事ね。
野良猫が人馴れしたら行うこと



人馴れが済んできたらどうするんでぇ?
撫でられるようになったり、ご飯を食べられるくらいの落ち着きが出てきたら病院に連れていきましょう。
病院に連れて検査・ワクチン接種などを行う
野良猫を無事に保護し、人馴れが進んだ後には、動物病院に連れて行きます。野良猫の健康状態を確認するための健康診断は必須です。
猫には外で生活している間に感染症や寄生虫が潜んでいる可能性が高いです。(ほとんどの猫はかかっていると思ってください)
- 猫エイズや猫白血病ウイルスなどの感染症
- ノミ・ダニ
- 回虫の有無
これらは他の動物や人間に影響を与えるリスクがあるため早期に確認しておくことが重要となります。
健康診断後は、ワクチン接種も必要です。猫ウイルス性鼻気管炎、猫汎白血球減少症、猫カリシウイルス感染症など、猫にとって致命的な病気を予防するため、適切なワクチンの接種を進めてください。


特に野良猫は寿命が短いと言われているので、少しでも長く一緒にいるために最初にしっかり健康チェックをしたほうが良いでしょう。



病気って自分じゃ気が付かないからな。



私達も病気になりたくはないからワクチン接種お願いね!
避妊・去勢手術を行う
野良猫を飼いたいと考えた場合、避妊・去勢手術は非常に重要です。猫は年に何度も発情期があり、繁殖力がとても高いため、望まない猫が生まれることを防ぐためにも適切な対応が必要です。
- 鳴き声の抑制
- マーキング行動の減少
- 攻撃的な性格の緩和
- 子宮・卵巣の病気を防ぐ(メス)
- 前立腺の病気を防ぐ(オス)
また、家猫だから避妊はしない!という考え方だと、万が一外に出てしまった時、取り返しがつかない事態になってしまう可能性もあるので、よく検討してほしいなとは思います。


地域の方にも理解を示してもらうためにも、猫を飼う上で、避妊や去勢は飼い主としての責任ともいえます。こうした対策を通して、猫や飼い主、さらに地域社会が安心して共存できる環境を作っていきましょう。
避妊・去勢について詳しい情報を見たい場合は妊婦猫の保護。もし保護した猫が妊娠していたら?をお読みください。





避妊・去勢しない!って結構怖いことなんだよね。



自分たちだけじゃ責任取れなくなっちゃうのが怖いわね…。
野良猫を飼いたい場合のよくある質問
その他、野良猫を飼いたい場合によくいただく内容をまとめてみましたので、参考にしてください。
家と外の行き来はさせて良い?
野良猫を飼う際に「家と外を自由に行き来させたい」と思う方は結構いると思いますが、おすすめしていません。
- 交通事故に会う可能性が出てくる(かなり多い…)
- 迷子になるリスクがある(こちらもかなり多い)
- 感染した病気を他の猫に感染させる可能性がある
- 新しい感染症を受けるリスクが高まる
- ノミ・ダニ駆除しても外に出る度にまたかかって、いたちごっこになりかねない
- 悪いことをすると「あのお宅の猫よ…」と地域で噂になる可能性がある
猫ちゃんの性格にもよりますが、基本的に室内だけでも十分に幸せに過ごせると思いますし、お世話するだけでなく、遊んであげることも忘れなければ、外に出さずとも良いかなと思います。
外に出す前に家の中だけは自由に行き来させるかどうかが先に検討する事項かなと思います。
お風呂に入れたほうが良い?
お風呂に入れるかどうかを聞かれたりしますが、猫は本来自分で毛繕いをしてきれいにする動物なので、基本的にはお風呂に入れる必要はありません。
しかし、保護時に汚れや重度のノミ・ダニがついている場合には、一度だけ暖かいお湯で洗浄して清潔にするのも良いでしょう。


ノミ・マダニに関するシャンプーは動物病院でも使われるこの商品がオススメ。


頻繁にお風呂に入れると皮膚の油分を奪ってしまうため、健康な猫の場合、どうしても必要な場合を除いて避けるのが良いでしょう。
保険は入ったほうが良い?
野良猫を飼う場合、ペット保険に入ることを検討するのは考えとしてはアリです。野良猫は寿命が短く、健康面での不安も大きいからです。
野良猫の年齢を病院でチェックして2〜3歳までであれば、保険を適用するのも考え方としてはアリだなーと感じますね。
ただし、あくまでも保険は『自分たちが持っている資産以上の支払いが発生する万が一の事態に備えるもの』です。
基本は万が一のことがあっても大丈夫なように貯金をしておくほうが一番損しないかなと思います。


このあたりは飼い主必見!ペット保険が不要とされる理由とは?で詳しく解説していますのでご覧ください。


トイレを覚えないんだけどどうすれば良い?
野良猫を初めて家に迎えた際、トイレを覚えられないという問題に直面することがあります。
一般的な飼い猫であれば、匂いが残らないようにとか、猫砂の種類を土に近いものにする…などの工夫で改善する可能性があります。
しかし、私達の場合も野良猫を迎えることがありますが、なぜか柔らかい布団の上でしかオシッコをしない、トイレではない特定の場所でウンチをしているなど思い通りにいかないことが多々あります。
猫の場合はしつけが難しく、どうしても難しいと感じる場合はケージ内だけで過ごさせ、訓練を長期間行うことを覚悟したほうが良いかなと思います。
最悪、そのくらいは許容するくらいの覚悟がなければ野良猫は飼えないかなと思います。
野良猫を飼いたい!その気持ちだけでなく、猫の気持ちも尊重することを忘れずに



野良猫から家猫になるっていろんな準備が必要なんだね。



捕獲器を借りられたらラッキーだな。



お風呂は勘弁してほしいけど…、まぁ、汚れてたら気になるし仕方ないかな〜。



入ったあとで揉め事は見たくないから事前に家族の了承は得ておいてほしいわ。
今回も見ていただいてありがとうございました。
野良猫を飼いたい!その気持ちは良いですが、野良のほうが幸せな子もいますので、その辺りの気持ちも汲みつつ、家猫として迎える準備をしていただけたらなと思います。
野良猫だから信頼関係が築けないわけではないので、決して簡単なことではありませんが、時間と手間をかけることでかけがえのない家族として迎え入れてあげてほしいなと思います。
それでは今回も猫田助、完了!
他にも保護猫の飼い方に関してや、仲良くためのコツなどをまとめているので、ぜひご覧ください。