今回お話するテーマは『野良猫の捕まえ方』。このテーマについて質問をいただきました。
こんにちは。30代の主婦をしています。家の近所によく現れる野良猫がいて、ずっと気になっています。はじめは庭先に姿を見せるくらいだったのですが、最近ではゴミをあさったり、夜中に鳴いたりするようになり、ご近所の方からも「なんとかならないかねぇ」という声や、ひどい人だとその猫に殺虫剤をまいてる姿を見かけるようになり…。
私自身、動物は好きなので保護してあげたい気持ちはあるのですが、家には高齢の両親もいて、どうしても飼ってあげることができません。それでも、このまま放っておくのもかわいそうで…。そこで、一度捕まえて保護団体さんや里親さんに譲渡できないかと考えています。
ただ、警戒心が強く、近づこうとするとすぐ逃げてしまうので、どうすれば安全に捕まえることができるのか、また保護した後はどうしたらいいのか、全く分かりません。こんな状況でも野良猫を捕まえて助ける方法はあるのでしょうか?
このように野良猫は地域に悪影響を与えることもしばしばあり、頭を悩ませている方は非常に多いようです。猫田助では現在、捕獲のお手伝いはしていないのですが、昔は捕獲を手伝ったりしていました。
そこでその時の知識が皆さんのお役に立つかもしれませんので、野良猫を保護(捕獲)したいと思った方にその捕獲の具体的な方法と、捕まえた先の譲渡の方法をお伝えしていきます。
大前提!野良猫の捕獲を依頼したいと思っている方へ
外で猫を見かけたとき「野良猫!捕まえなきゃ」と保護猫団体に慌てて連絡をしてしまう方がいらっしゃいます。ですが、保護猫団体では捕獲はほとんどしておらず、ケガ・病気の救護までしているところはさらに少ないです。
怪我や病気の「救護」までを行っているところは「動物愛護団体」と呼ばれ、保護団体では以下の対応ができないことがほとんどなので、注意が必要です。
- 怪我をした猫の捕獲
- 野良猫の捕獲、保護
保護活動をしている団体は、個人または非営利団体・組織で行っている事が多く「譲渡」の意味が強いです。
譲渡とは、団体が保護している保護動物を引き取る(譲り渡す)ことです。
野良猫の捕獲方法

野良の猫を保護したい!と思ったときに気をつけることってなんでぇ?
野良猫を保護するときの前提として、迷い猫でないかを必ず確認しておきましょう。
- 迷い猫 〇〇(市区町村)で検索
- 指導センター、愛護センターで保護している動物の情報
- 収容動物検索情報サイト
- 迷い猫データベース(LOSTPET.JP、ネコジルシ、迷子ペット.NETなど)
- 最寄りの警察署
- 最寄りの動物病院
- 近所で脱走情報がないか
その上で捕獲にはさまざまな準備や、コツがありますので紹介します。
捕まえる前に病院や、保護猫団体と連携しておく



よっし、じゃあ捕まえるぜ!
いえ、捕まえる前に病院の予約日、できれば保護猫団体に渡す日を確定しておきましょう。



そいつぁ、どうしてだい?
病院の予約、譲渡を行う場合、それなりの日数を要するからです。待っている間はご自身で保護し続けなければいけません。
その日数を最短にするためには病院を受診する日を捕獲日、その当日、もしくは翌日を譲渡日とするほうが負担が少なくて済みます。なので、最初から終わりの日を決めて動きましょう。



た、たしかに捕獲したら終わりってわけじゃないもんね…!
捕獲器の準備と設置
野良猫を保護したい場合には捕獲器が必要です。


人に慣れている子は抱っこできるんじゃないかと思いがちですが、いつもと違う雰囲気は猫が警戒してしまうので、意外と難しかったりします。特に今回のように人に殺虫剤をまかれている場合だと、明らかに敵意を持っている可能性もあり、ほぼ懐かないでしょう。
また、普段は穏やかでもびっくりして引っ掻いたり噛みついたりすることもあるので、お互いの怪我を防ぐためにも捕獲器があると安心です。
ちなみに捕獲器はインターネットなどでも購入できます。通常サイズの猫であればこのくらいの捕獲器で十分対応可能です。


ただし、タヌキくらいのサイズの大きい猫は体当たりで逃げられてしまう可能性があるので、もう少し頑丈な捕獲器を使うのもアリですね。





なるほどな!しっかし、わざわざ捕獲器を買うしかねぇのかい?
そうですね。1回しか使わないかもしれないし、どういったものを買ったらいいのか?迷ってしまうと思います。市区町村、動物病院、動物愛護センターで捕獲の際の貸出を行っているところもありますので、まずは相談してみましょう。
捕獲器を借りる際に「捕獲後にどうするか?」と聞かれるので、自宅で保護するか、あるいは初期対応が終わったら保護してくれる団体を確保しておくとスムーズです。
捕獲器の設置場所は、猫が普段行動している場所や餌を食べているところを選びましょう。捕獲器の中に餌を入れて、猫が自然に入ってくれるようにします。





捕まえられる・・・!ってわかるとビビっちゃって、威嚇したり猫パンチしちゃうんだよね。



ぼくもしばらくパニックになって、ケージの中で暴れてたなぁ。
猫の警戒心を減らす方法



捕獲器で捕まえる精度って上げられるんかい?
野良猫は非常に警戒心が強いので、保護したい場合にはなるべくその警戒心を減らすと保護しやすくなります。
先ほど、お腹をすかせて捕獲する方法をお伝えしましたが、捕獲器自体に慣れさせておく方法もあります。
このように慎重を期すのは、捕獲は一回きりしかチャンスがないからです。一度でも失敗すると捕獲器にはなかなか入ってくれなくなります。



私達だってバカじゃないのよ。ちゃんと学習するわ。
捕獲する時間帯とタイミング



なるほどな。じゃあよ、いつ猫は捕獲しやすいんでぇ?
野良猫を捕獲する最適な時間帯は、猫が最も活発に動く夕方から夜間です。
質問の中にもあったように、この時間帯は猫が餌を探して行動する時間でもあり、人通りが少なくなるので捕獲器に入りやすくなります。


捕獲器以外の捕まえ方



万が一、捕獲器で捕まえるのが失敗しちまって、もう捕獲器入ることはなさそうだってなったらどうすりゃいいんだい?
捕獲器が準備できない!捕獲器で捕まえることに失敗した!という場合は基本的に強硬手段となります。
基本的には数人で追い詰めて捕獲するので、引っかかれないように&引っかかれても良いように準備をしましょう。
まずはペットグローブ。ペットグローブだと厚手なので噛みつかれたとしても全然平気です。


しかし、素早いだけでなく、塀を飛び越えたりとジャンプ力も高いので、手では簡単に捕まらないのが猫。



どうすりゃいいんでぇ?
そこで用意するのが捕獲網です。


隙間を縫って、くぐり抜けようとしたその先に網を待ち構えて捕まえます。
ちょっと高いのですが、このタイプの捕獲網はクルッとひっくり返して袋状にできるので、逃げられにくかったですね。



捕獲網ってすっごくビックリするんだよね〜。



もうちょっと優しく扱いなさいよね!
保護した後の初期対応
隔離場所の設定



やっと捕まえられたぜ!次はどうしたらいいんだい?
無事に保護できたら、すみやかに隔離場所へ移動します。
先住猫、犬などがいる場合は接触しないようにケージに入れて隔離したり、部屋を分けたりする必要があります。
野良猫はノミ・ダニ、回虫がいることが多く、猫風邪などの病気にかかっていることもあります。家猫と接触すると感染してしまうこともあるので注意しましょう。





ケージがなかったらどうすりゃいいんでぇ?
基本的にはケージですが、子猫など逃げないようなら段ボールで作った簡易ケージでも大丈夫です。





ここまで来ればひとまず安全ね。



自分の空間ができると一息つけるわね。
健康チェックと獣医の受診
病院へ連れていく



病院は適当に連れて行きゃいいのかい?
はい、猫を保護できたら、最寄りの動物病院への健康診断へ行きましょう。
野良猫を保護した直後は、必ず健康チェックが必要です。譲渡するためにも動物病院や獣医に受診し、外見から見える傷や病気の有無などを確認しておきましょう。
里親探しを見据えて、以下の対応が可能か相談します。
- 簡単な健康チェック(妊娠しているかどうかも)
- 年齢チェック
- ノミ・ダニ虫下し
- 血液ウィルス検査
- ワクチン(3種または5種)



ちなみにお金は自分持ちかい?
はい、そうなります。ただし、譲渡する際にかかったお金をまとめておき、引き渡し時にお金をもらうというのはアリです。
餌について



譲渡するまではしばらくかかるかもしれねぇし、猫さまの餌を用意してぇんだけど、どんなのが良いんだい?
猫ちゃんの食事はその猫ちゃんがどのくらいの月齢かによります。
歯を見てみて、牙が2つ生えてるような時は柔らかいフードは食べられます。場合によってはカリカリもいけますね。


ちゃおちゅ〜るは猫用ミルクを卒業すればいけます。


歯が小さいとか、目が開いてないっていうレベルだと、猫用ミルクを与えましょう。


赤ちゃん猫の場合は育てるのが難しいので、野良の子猫の保護の仕方をご覧ください。





ボクはちゃおちゅーるがいいな…。



贅沢言っては駄目よ?
譲渡先を見つける



ひとまずいろんなことが済んだからよ、次はいよいよ譲渡してぇんだけど、どうしたらいいんだい?
譲渡先を見つける方法はいくつかあります。保護猫団体以外にも方法はたくさんありますよ。
保護猫団体に連絡する場合



まずは保護猫団体に連絡するでいいんかい?
そうですね。病院の受診も済み、健康であるならば保護猫団体にも話が通りやすいですね。
- 賃貸物件や、社宅で動物NGがある
- 自分や家族が猫アレルギーである
- 先住動物と相性が良くなく、喧嘩してしまう
- 鳥や、小動物を飼っていて猫に狙われてしまう
保護できないのでどこかで保護してもらいたいっていう時には、保護猫団体に問い合わせをしましょう。
ただ、空きがない場合もあるので、その時は他の方法を検討してください。



自分が連絡入れる時、他も同じ状況になってることが多い。ちょうどシーズンってことさ。



もし駄目でも諦めないでね。
友達に連絡する場合



その他に友達に貰い手がいねぇか連絡する形はどうかよ?
友達は貰い手を探す場合に強いです。
まず知り合い、知人、友人、隣人…、友達の友達や、職場の同僚にまで範囲を広げて聞いてみるのが1番手っ取り早いですね。
他にも意外とLINEの友達欄には100人くらいはいたりするので、久しぶりに連絡取ってみるのも良いかも。



知ってる人だと安心できるね。
SNSで里親を募集する
あとはSNSで広く呼びかけるのも手ですね。X、Facebook、Instagramがやはり強いです。
- 【急募】、【拡散希望】などを付けるとシェアがたくさんもらえる可能性がある。
- エモい(感情を揺らすこと)文章を付けると効果的
- 写真は必須。動画があると尚良い
- 連絡先はDMでやり取りしてから。投稿文には絶対に載せない
うまく使えばたくさん連絡をもらえる可能性があるのがSNSの強みですね。アカウントを持っているなら使ってみるのも手です。



SNSは猫には無縁ね。



人間たちはSNSで猫ばっかり見てるみたいだよ〜。
地元の掲示板や、ジモティーなど地元フリマアプリを使う



保護猫団体も、友達も駄目だったらどうすりゃいいんでぇ?
地元のネットワークを通じて里親探しをするというのもアリですね。
最近では、ジモティーや、ネコジルシなど地元フリマアプリ経由で猫の里親探しを行えるようになりました。
ジモティーの里親カテゴリは、やむを得ず手放すことになったペットの命を「救って欲しい方」と「救いたい方」を繋ぐ場になれればと考え運営しております。その結果、殺処分や虐待がゼロになることに貢献できればと考えております
ご利用に際してのルール
里親トラブルにご注意ください – ジモティー
・生体売買は禁止です
発見した際にはジモティーのご利用をお断りします。
・ご利用には身分証認証が必要です
里親は他カテゴリと異なり、生体を扱う場のため、身分証提示が必要です。
また、譲渡契約書の取り交わしを必須としています。譲渡契約書ダウンロード
・譲渡後も必要に応じて飼育状況の確認を行います
譲渡後に投稿者からのご連絡に対応いただけない場合、警察などの第三者機関や投稿者に身分証の内容を開示する場合があります。
・無責任な理由での募集は行なえません
譲渡理由が曖昧なものや、無責任な繁殖等による里親募集を確認した場合、掲載をお断りします。
・譲渡・引き取りは原則として一回までです
無責任な繁殖による里親募集と、多頭飼いによるトラブルを防止するためです。2頭目の募集や引き取りを行う際には、ジモティーへ身分証や団体証明を提示いただきます。
ご利用のユーザー様へお願い
・トラブル発生時に正確に内容を把握し、迅速に対応するために、やりとりはジモティー内メッセージ機能をご利用ください。
・掲載内容ややりとりにおいて少しでも不審に思われる点がありましたらカスタマーサポートまでご連絡ください。
これは譲渡などを通じて、動物虐待などをしている人の元に手渡されてしまうことを防ぐためです。手渡して、「はい終わり」というわけにはいかないのが譲渡の難しさなのです。利用する時は注意しましょう。
しかし、うまく使えば多くの人の目に触れるようになります。上手に使って、里親さん探しをしましょう。



虐待なんて冗談じゃないわ!



優しい飼い主の元で甘えたいな〜。
どうしても譲渡先が見つからなかったら?
譲渡先の範囲を拡大する



譲渡がすぐ見つかればいいんだけどよ、見つからない場合ってどうした方がいいんでぇ?
見つからない場合でも、友人・知人をまず頼ってみてください。「お友だちで飼いたい人いない?」って聞く感じですね。
それでもダメだったら、動物愛護センター、動物指導センターで相談をしてみてください。
それも駄目だったら、近隣以外で活動している保護猫団体とか猫ボランティアさんを見つけて、預かってもらうのを狙ってみましょう。



簡単に諦めないでくれよな。
TNRという方法
それでも譲渡できない場合は、TNR(Trap・Neuter・Return)という方法もありです。これは避妊・去勢手術をして元の場所に戻すという立派な保護猫活動です。
TNRとは?
TNRとは捕獲して、避妊・去勢手術をした後に元の場所に戻すことです。
Trap(トラップ):捕獲すること
- 猫がけがをしないように気をつける
- 連絡先、目的などを書いた張り紙をつける
- 捕獲機を仕掛けている間、その場所から離れない
- 猫が捕獲機に入ると、速やかに布で捕獲機全体を包み込んで猫を安心させる
Neuter(ニューター):不妊手術のこと
- 不妊手術済みの目印として、猫の耳先をVカットします
- 全身麻酔がかけられているので、猫は痛くありません。
- 出血もほとんどありません。
Return(リターン):猫を元の場所に戻すこと
さくらねこTNRとは – 公益財団法人 どうぶつ基金
- 猫ボランティアさんは術後経過観測をすること
- 猫は置き餌をせずに、猫が食べ終わるのを待ち、後片付けと掃除をすること
- 捕獲もれの猫は速やかに捕獲してTNRを行うこと





見つからなくても元に戻すって方法もあるんだよね〜。



万が一見つからなくてもこの方法なら良さそうだね…!!
避妊・去勢せず野生に戻すのはやめてほしい



いろいろうまく行かなくてよ、一回は保護したけど「見つからないからやっぱやめた」って言って、そのまま野生に戻したらどうなるんだい?
今まで野良で生活していて、比較的体格が良い子だったら大丈夫だと思いますが、体の小さい子をお母さんなしで野生に戻したら、生存率はかなり低いと思います。



やっぱりやめたって言うのは訴えられたりするんかい?
それが微妙なところなんです。
基本、飼い猫とか飼い犬を捨ててしまうっていうのは犯罪なんですが、一時的に保護してそれを戻す…は所有者でもないし、外に放したがどこに当たるかはちょっとなんとも言えないです。個人判断では難しいですね。
ただ、拾った時点で所有者になると思うので、基本的には拾ったら最後まで面倒を見ると思ってください。
手放すにしても避妊・去勢をしてTNRという方法を取るなら良いかなと思います。



一度面倒を見る!ってなったら、やっぱり大変なんだよね。
野良猫の譲渡までは大変だけど尊いこと



やっぱり捕獲には捕獲器が一番だね。



動物愛護団体と保護猫団体って目的が違うなんて、はじめて知ったわ〜。



ボク的にはTNRの存在が大きいな…。うまく渡せなくても心折れないし…。



やっぱりネットの時代だから、文明の利器を使わないと損よね!
最後に野良猫の保護をここまで考えてくれて、本当に嬉しく思います。
野良猫を保護することで、地域の衛生問題や騒音問題も軽減されますし、保護された猫が避妊・去勢手術を受けることで、将来的な野良猫の増加を抑制し、野良猫問題の根本的な解決に繋がります。
野良猫を保護したいと考えた時、保護活動は一時的なものではなく、継続的なケアが必要だということに気づきます。これは、保護猫が新しい生活に馴染むまでのサポート、健康管理、定期的な受診が必要だからです。
また、里親への譲渡を視野に入れたときには人馴れ、家馴れする必要があり、野良生活が長く警戒心が強い子の場合は最低でも半年の時間がかかります。
野良猫の保護活動を支えるためには、個人だけでなく、地域社会や愛護団体、様々な機関との協力も不可欠です。
保護猫に関わりながら、それぞれが小さな一歩を踏み出し、集まることで大きな支援の輪が広がります。適切な支援があれば、もっと多くの野良猫が救われ、幸せな生活を送ることができるのです。
これからもできることで協力していただければ幸いです。
それでは、今回も猫田助完了!
他にも保護猫の捕獲、保護に関しての情報をまとめているので、ぜひご覧ください。