今回のテーマは『保護猫がなかなか馴れない』というテーマについてお話していきます。
30代夫婦で初めて保護猫を迎えました。
保護団体の方からは“この子は少し臆病な性格ですよ”と聞いていたのですが、きれいな毛並みに一目惚れして、思わず家族に迎えてしまいました。
ただ、やはり警戒心が強くて、家に来てから2週間経つ今も隅っこから出てきません。
目が合うとすぐに逃げてしまうし、ご飯も人がいないときにこっそり食べるだけ…。
ちなみにこの子は3歳の成猫です。このまま慣れてくれないのではと不安です。初心者の私たちでもできることはあるのでしょうか?
猫田助では、臆病な性格の子ももちろんいます。
できる限り人馴れしてから募集をかけるようにはしていますが、環境の変化や、相性などもあって、なかなか馴れてくれない…という声もあります。
本当にたまーになんですが、トライアル失敗して戻ってきてしまう…なんてこともあったりします。
では、そんな臆病な猫ちゃんや、なかなか馴れてくれない保護猫に対して、どのように考え、対処すれば良いのか?今回はそんなお話をお伝えしていきます!
なぜ保護猫はすぐに馴れないの?
保護猫はさまざまな過去を抱えています。
捨てられた経験や外での過酷な生活、人間との辛い思い出がある場合、人を信頼するまでに時間がかかるのは当然です。
特に、猫には『社会化期』と呼ばれる生後2〜9週齢までの期間があります。
このようなネコの行動には社会性があることが明らかになってきている。食糧資源が豊富にある場所で集団が形成される場合,メスのオトナ個体とその子ネコたちによって核となる集団が形成される。そして,複数の核となる集団にオスのオトナ個体が加わって群が形成されることが多い。核となる血縁関係にあるメス同士が,お互いの子へ授乳したり,繁殖していない個体が子の世話をするなどの協同繁殖を行うことも知られている
ネコの社会的知性はいかに研究するべきか – 東京大学 齋藤慈子・慶應義塾大学 篠塚一貴
この間に人間との良い関係を築く経験をしていないと、大人になってから人に対する警戒心を持ちやすくなると思われます。
実際に猫田助でも、生まれて間もない子猫、生後1ヶ月の子猫を育てる機会がありましたが、生後一ヶ月のほうがビビって近寄ってこないことがありました。つまり、その頃にはもう人間に対する恐怖(未知のものへの恐怖)があると思って良いでしょう。

まずは、「この子は今までどんな生活をしてきたんだろう?」と想像し、焦らずに受け入れてあげてください。

安心させることが大切だね。



子猫の時期はヒトとの社会化を育む絶好の機会なんだな。
保護猫が心を開く5つのステップ



社会化っつうのがあるのは分かったけどよ、実際どうやったら心を開いてくれるんでぇ?
それぞれ猫ちゃんの社会化の段階があるとは思いますが、今回の場合は『保護猫として飼育されていた』、『警戒している』という、人馴れするかもしれない子を想定して5つのステップに分けてみました。
ケージでの生活に慣れさせる
新しい環境にいきなり解放されるのは、猫にとって大きなストレスとなります。まずはケージの中で安全と安心を感じられるようにしましょう。


まずは身の回りのお世話をちゃんと行う
ご飯やトイレなど、猫の生活に必要な世話を淡々と行うことが信頼の第一歩。直接触れ合わなくても「この人は危害を加えない存在だ」と感じてもらうことが大切です。


また餌をあげることで食いついてくれる場合は、「この人はご飯をくれる人」と認識してくれやすく、姿を見せるだけでニャーニャー鳴くこともあります。こんな時は信頼を得てきている証拠です。
距離を測りながら存在に慣れさせる
無理に近づかず、同じ空間で過ごしたり、優しく話しかけたりして、人の存在に慣れさせましょう。
警戒している時は視線を合わせないほうが安心させるサインになります。
結果は,予想とは異なり,実験1と同様にヒトが視線を向けたときにネコがヒトを見た総時間は短くなった。このことから,相手との親和の程度やヒトとネコの距離に加え,そのときのネコの心理的状態にも依存せずに,ヒトがネコを見るとネコはヒトを見なくなるということが考えられる。
ネコにおけるヒトから向けられた視線の認識 子安ひかり・永澤美保


ご褒美を与えて怖くない存在だと分からせる
おやつやご飯を通じて「この人は良いことをくれる存在」と認識してもらいましょう。ただし、手から直接与えるのは猫が慣れてからで大丈夫です。
ちゃおちゅーるは匂いが強く、警戒していても食べてくれやすいので最初一歩にオススメです。


孫の手を使って積極的に仲良くなりにいく
いきなり手で触れるのが難しい場合は、孫の手などを使ってそっと顔周りを撫でてあげるのも効果的。猫の様子をよく観察し、暴れる場合はすぐにやめることも大切ですが、毎日続けることで「いつものコレか」って慣れていってくれます。







ゆっくり少しずつ距離を詰めていきましょ〜。
なかなか馴れてくれない保護猫と仲良くなる撫でテクニック



さっきのステップでもなかなか慣れてくれねぇんだけどよ、どうしたら良いんでぇ!?
その場合はもう少し深めに馴れさせる撫でテクニックを使っていきましょう!
孫の手で撫でられる場所を増やしていく
孫の手が怖くないものだと分からせるために、まずは匂いを嗅がせます。この時点で激しく猫パンチ、噛みついたりしたらそれ以上踏み込むことは止めましょう。


大丈夫そうだったら、ゆっくりアゴ下へ。アゴ下も大丈夫だったら、おでこの辺りも撫でてみましょう。力を入れすぎると嫌がるので、ゆっくりと撫でてあげます。


猫は上から下にかけてハードルが高くなっていきます。顔の次は目で確認できる前足にトライしてみましょう。


次は後頭部や、首の後ろです。警戒モードだと嫌がる猫ちゃんも増えてくるので、ゆっくり慎重に、嫌がったら次の日に持ち越しくらいでOKです。


次は背中です。実は背中は最初はあまり撫でさせてくれない場所です。ゆっくり慎重に撫でていきましょう。


次はお尻です。お尻は性感帯も通っている場所であり、警戒中の猫ちゃんだと不快に思う猫ちゃんが多いです。お尻を上げる動作をしたら人馴れしたも同然!


最後はお腹です。お腹は猫にとって急所なので、基本的に警戒中は触らせることすら許してくれません。(猫パンチされたり、噛みつかれたりします)ここを触れるようになったら確実に人馴れしていると思っていいでしょう。





孫の手は人の手に似ているから、馴れさせることができるのよ。



いやー、猫だとこれは手なのか、孫の手なのか分からないねー。
孫の手から人の手へのすり替え作戦
孫の手で撫でることに馴れてきたら、孫の手を持つ手を反対の手で撫でることにチャレンジしてみてください。
ここではバレないように慎重にすり替えていくのがコツ。ナデナデの心地よさが不快感よりも勝っていれば、「おい、それ手じゃねーか!」って途中でバレても撫でさせてくれます。


このようにして人の手に馴れ、人自体に馴れていくように持っていきましょう。



ナデナデされている手がすり替わっているかなんて気づかないのよね。



べ、別にアンタなんか好きじゃないんだから!
なかなか馴れない保護猫にやってはいけないNG行動



猫に嫌われやすい行動ってあるんかい?
ありますね。基本はこの3つです。
- 子どものように距離感のない近づき方
- 常に監視する
- 無理矢理触る・なでる・抱き上げる
まず、無理やり抱っこしたり、触ったりなど、猫が嫌がることをしないのは絶対です。
猫は子供みたいに急に大きい声を出したりとか、急に近寄ってきたりとか急に距離感を詰められるっていうのがとても苦手です。
臆病な子は更に輪をかけてそういった行動には警戒心を強めてしまう原因になるので、猫ちゃんのペースに合わせて優しく接しましょう。
詳しい内容は臆病な猫の飼い方に書いてあるので、そちらもぜひご覧ください。


【猫田助の体験談】警戒心MAXだった保護猫が心を開くまで



猫田助でも、そういう臆病な子っていたよな?
そうですね、猫田助でも、まったく懐かず威嚇ばかりだった保護猫はたくさんいます。触れられるまでに何ヶ月…中には年単位でかかる子もいて、「この子とは心が通じ合えないかもしれない」と感じた日々も…。
でも、時間をかけて少しずつ距離を縮める中で、ある日ふと気づいたんです。いつもなら逃げていたその子が、逃げずにじっとこちらを見ていたことに。
まだビビりながらも、その場にとどまってくれたこと。それが、信頼の第一歩でした。
とはいえ、最初は手を出すのがちょっと怖かったですけどね(笑)。
慣れるまでにはかなりの時間がかかる子もいるってことを理解してもらえたらと思います。





ウ、ウラン先輩…!やっぱりビビってたんですね…。



後輩だけあって、あなたも随分ビビってるけどね〜。
大切なのは「時間」と「猫のペース」



やっぱりゆったりと時間をかけないとね。



孫の手はかなり効果高いからオススメよ〜。



嫌がったら止めるのよ。



やるべきことをしっかりやって時間かければ、大体の猫は仲良くなれるぞ。
保護猫が心を開くには時間がかかるもの。
でも、その過程こそが一緒に過ごす大切な時間です。無理に慣れさせようとせず、猫のペースに合わせて、ゆっくりと信頼関係を築いていきましょう。
他にも保護猫の飼い方に関してや、仲良くためのコツなどをまとめているので、ぜひご覧ください。