今回のテーマは『猫のトイレ以外の排尿対策』について。
せっかくトイレを用意したのに、布団やカーペットなど、違う場所でおしっこをされてしまう……。この悩みは、猫と暮らす上で最も深刻なトラブルの一つです。
「どうしてこんなことするの?」「嫌がらせ?」と悩んでしまう前に、まずは同じ悩みを持つ飼い主さんからの相談を見てみましょう。
件名:急にベッドでおしっこをするようになってしまい、途方に暮れています
猫田助の皆様、はじめまして。K.Mと申します。3歳のオスの愛猫(レオ)の粗相について相談させてください。
子猫の頃からトイレの失敗は一度もなかったのですが、ここ1ヶ月ほど、私のベッドの羽毛布団やリビングのソファでおしっこをするようになってしまいました。最初は「たまたまかな?」と思い、きれいに洗濯をして消臭もしたのですが、その後も数日おきに同じ場所でされてしまいます。
トイレは毎日掃除していますし、猫砂もずっと同じものを使っています。環境に大きな変化もありません。仕事から疲れて帰ってきて、布団におしっこのシミを見つけると、悲しくて涙が出そうになります。「私への当てつけ?」「嫌がらせ?」と疑ってしまうこともあり、そんな自分も嫌になります。
動物病院へ行くべきか、それともしつけの問題なのか、どう判断すればよいのでしょうか。どうか、解決の糸口を教えてください。よろしくお願いいたします。
K.M様、ご相談ありがとうございます。毎日のお洗濯、本当にお疲れ様です。
猫がトイレ以外で排泄してしまうのには、必ず理由があります。それは決して飼い主さんへの嫌がらせではありません。
ちなみに猫田助でも以前、何をやっても粗相を繰り返す子がいて、その子の対策として本当に悩みながらいろいろやったものです。
この記事では、提示いただいたお悩みを解決するため、私たちが調べたり、実行してきたことで得られた具体的な原因と対策をお伝えしていきます。
なぜ猫はトイレ以外の場所でおしっこ・うんちをするのか?
猫田助ちゃんとトイレがあるのに、なんでわざわざ別の場所でしちまうんだい? 理由がわからねえと対策のしようがねえよな。
猫が不適切な場所で排泄をしてしまう背景には、習性、環境、心理的な要因が複雑に絡み合っています。まずは主な原因を一つずつ紐解いていきましょう。
柔らかい場所が好き
猫の祖先(リビアヤマネコ)は砂漠で暮らしており、柔らかい砂地を掘って排泄をする習性があります。そのため、本能的に足触りが柔らかくて、掘れそうな場所をトイレとして認識しやすいのです。
特に羽毛布団、ソファ、クッション、洗濯物の山などは、猫にとって極上のトイレに感じられることがあります。保護猫の中にも、猫砂よりも布の上を好む性格の子がいました。





ふかふかのお布団って、足が沈んで気持ちいいのよね〜。おしっこもすぐ吸い込んでくれるから、足が汚れなくて好きなの〜。
粗相をした時からの慣れ・癖
一度でもトイレ以外の場所で排泄をしてしまうと、「ここはおしっこをしていい場所だ」と学習してしまうことがあります。


特に、ニオイが完全に消えていない場合、その残留臭が誘引剤となり、同じ場所で繰り返す癖がついてしまいます。これを早期に断ち切ることが重要です。



猫は習慣の動物なんだよ。一度「ここはトイレだ」と認識すると、そこでするのが当たり前になってしまうんだね。
マーキング・発情
避妊・去勢手術をしていない場合、自分の縄張りを主張したり、異性を惹きつけたりするために、通常のおしっこではなく濃いニオイの尿を撒き散らすスプレー行為(マーキング)を行うことがあります。


これは壁や家具など垂直な面に行うことが多いですが、布団の上ですることもあります。
また、去勢済みであっても、不安やストレスから安心するために自分のニオイをつけるマーキングを行うことがあります。



ここはオレの縄張りだぞって主張しないと、落ち着かないんだ。
トイレが汚い、またはできない状態
猫は非常にきれい好きな動物です。
- 排泄物が残っている
- 猫砂が少なくて掘れない
- トイレ自体にニオイが染み付いている
- 多頭飼育で、他の猫が使った直後である
このような状況だと、猫はトイレに入るのを拒否し、より清潔で快適な場所(部屋の隅や布団など)を探して排泄してしまいます。



アンタ、流してないトイレに入りたくないでしょ? 私だって誰かのブツがある場所でするなんて絶対に無理なのよ!
ストレス
環境の変化や飼い主さんとの関係性がストレスとなり、粗相につながることがあります。
- 引っ越しや模様替え
- 新しい同居人やペットの増加
- 飼い主さんの不在時間が長くなった(分離不安)
- 叱られたことによる恐怖
猫は言葉で不満を言えないため、排泄という行動でSOSを伝えている可能性があります。



怖くてドキドキすると、いつものトイレまで行く余裕がなくなっちゃうんだね……。
老化
シニア猫になると、認知症によってトイレの場所がわからなくなったり、トイレに行きたいという感覚が鈍くなったりすることがあります。


また、関節炎などの痛みで動きが遅くなり、「トイレまで間に合わない」ために近くで漏らしてしまうケースも増えます。



トイレの縁をまたぐのがちょっと辛いのかもしれないわ。
トイレ以外でする場合、泌尿器に関する病気かも



おいおい、ただの癖だと思ってたら大間違いってこともあるらしいぜ。もしかして病気で苦しんでるんじゃねえのかい?
今回のケースのように「急に粗相をするようになった」という場合、もしかしたら病気かもしれません。排尿時の痛みや違和感から、トイレを嫌がったり、我慢できずに漏らしたりしている可能性があります。
代表的な病気を以下の表にまとめました。
| 病名 | 症状・特徴 |
|---|---|
| 特発性膀胱炎 | ストレスなどが原因で膀胱に炎症が起きる病気です。頻尿、血尿、排尿痛が見られます。トイレで痛い思いをした記憶から、トイレを避けて布団などで排泄することがあります。 |
| 細菌性膀胱炎 | 細菌感染による膀胱炎です。特発性と同様に痛みや残尿感があり、トイレに行く回数が極端に増えます。 |
| 尿路結石症 | 尿の中に結晶や結石ができ、尿道や膀胱を傷つけます。結石が詰まる尿道閉塞になるとおしっこが出なくなり、命に関わる緊急事態となります。 |
| 慢性腎臓病 | 高齢猫に多く見られます。腎機能の低下により、薄いおしっこを大量にするようになります(多飲多尿)。トイレがすぐに汚れたり、我慢できずに漏らしたりします。 |
| 糖尿病 | インスリン不足により高血糖状態が続きます。腎臓病と同様に、水を大量に飲み、大量のおしっこをするため、トイレの失敗が増える原因となります。 |
| 高Ca血症 (高カルシウム血症) | 血液中のカルシウム濃度が高くなる病態です。多飲多尿を引き起こし、シュウ酸カルシウム結石の原因にもなります。リンパ腫などの腫瘍が背景にある場合もあり、注意が必要です。 |
| 子宮蓄膿症 (メスのみ) | 避妊手術をしていないメス猫特有の病気で、子宮に膿が溜まります。多飲多尿に加え、元気消失、食欲不振、陰部からの排膿などが見られます。 |
| 甲状腺機能亢進症 (シニアに多い) | シニア猫に多いホルモン異常です。食欲が増すのに痩せる、活発になる(攻撃的になる)、そして多飲多尿が見られます。落ち着きがなくなり粗相をすることもあります。 |



猫は痛みを隠すのが上手な生き物なんだ。だからこそ、『粗相』というサインを見逃さないでほしいね。



しつけを疑う前に、まずは尿検査を受けることが解決への一番の近道よ。
尿検査する場合、トイレシートを裏返して吸収されないようにしましょう。
猫をトイレ以外でさせない対策



理由は分かったけどよ、一体どうすりゃ止めさせられるんだい?その方法を教えてくんな!
病気の可能性がない(または治療中)なら、環境面での対策を徹底しましょう。ここでは5つの重要ポイントを詳しく解説します。
やわらかい場所に嫌な感触をするものを置く
猫が布団やソファを好むのは、足が沈み込むような柔らかい感触が好きだからです。この好みを逆手に取り、猫が本能的に嫌がる感触に変えてしまうのが物理的対策の基本です。
- カサカサと音がするブルーシートやビニールカバーをする
- ひんやりして金属音がするアルミホイルをする
- 両面テープを敷き詰める
ポイントは、中途半端に行わず、ベッド全体を覆うように徹底することです。
「ここに乗ると嫌なことが起こる(足触りが悪い)」と猫が学習するまで、数週間は継続する必要があります。見た目は悪いですが、習慣を断ち切るための期間限定の措置として割り切りましょう。
どんなところにも使える透明ビニールシートは使いやすいですね。
厚手のビニールシートが欲しいならこのような防水系を選びましょう。



あのカサカサする音、びっくりするから近づきたくないんだよね……。
避妊手術をする
まだ避妊・去勢手術をしていない場合、粗相の原因が性ホルモンによるマーキング(スプレー行為)である可能性が非常に高いです。これはしつけで直るものではなく、本能的な行動です。
手術を行うことで、発情期特有のイライラや縄張り意識が薄れ、約90%以上の猫でスプレー行為が減少・消失すると言われています。(メスも減少します)
また、K.Mさんの愛猫レオくんのように既に去勢済みの場合でも、手術の時期が遅かったりすると、ストレスを感じた時にマーキングのような行動が出ることがあります。
その場合は、後述する環境改善やストレスケアと合わせることで、症状が落ち着くことが多いです。



手術すると、なんだか気持ちが穏やかになって、縄張りのこともそんなに気にならなくなるんだ。
臭いを消す
「洗濯したから大丈夫」は大間違いです。猫の嗅覚は人間の数万倍とも言われ、わずかでも尿の成分が残っていると、そこをトイレとして認識し続けます。
猫の尿に含まれるフェリニンなどの成分は、一般的な洗濯洗剤では分解しきれません。漂白剤の強い香りで上書きしようとすると、猫はそのニオイを消そうとして、さらに上からおしっこを重ねる悪循環に陥ります。
- クエン酸水
- 次亜塩素酸水
- 酵素系洗剤・バイオ消臭剤
- 60度以上の熱湯に浸け置きしてから洗濯
オススメは次亜塩素酸水です。ただし、次亜塩素酸ナトリウム水はアンモニアと結合して、有害なガスを発生させるので絶対に使わないように注意しましょう。(名前も似ているので本当に注意)



クンクンしてもニオイがしないなら、別の場所を探すわ〜。
トイレ環境を見直す
ここが最も重要な対策です。トイレはあるだけでは不十分で、猫が喜んで使いたくなるトイレでなければ意味がありません。
以下の基準を満たしているか、厳しくチェックしてください。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| トイレの数 | 国際的なガイドラインでは飼育頭数+1個が推奨されています。1匹飼いでも2個置いてみてください。汚れていたら予備を使えるため、失敗が減ります。 |
| トイレの大きさ | 市販のトイレは小さすぎることが多いです。猫の体長の1.5倍(約50cm以上)の大きさが必要です。 |
| 猫砂 | 多くの猫は、自然の砂に近い鉱物系(ベントナイト)の細かく重い砂を好みます。システムトイレのチップは足裏に痛く、嫌がる猫も多いです。 |
| トイレの清潔さ | 1ヶ月に1回は砂を全交換し、容器を水洗いしてください。容器自体にニオイが染み付いていると、猫は使用を拒否します。 |
猫田助がオススメするトイレはデオトイレのハーフカバーですね。奥行きは54cmあるので丁度いい大きさです。
鉱物系の猫砂では、コスパ重視ならアイリスオーヤマのクリーン&フレッシュ。
粉塵を吸い込むのが嫌ならちょっと高いけどHappy Days(ハッピーデイズ)のオードロックがオススメです。



砂はサラサラ、広くて静かで清潔な場所。これさえ用意してくれれば文句はないわよ!
ストレス発散させる
環境の変化や運動不足によるストレスは、特発性膀胱炎や問題行動の引き金になります。「猫は散歩に行かないから楽」と思われがちですが、室内飼育の猫にも適切な運動と刺激が必要です。
1日合計15分程度で良いので、猫じゃらしを使って狩りの真似事をさせてあげてください。獲物を捕まえる達成感は、猫の自信と安心感に繋がります。
自動で動くおもちゃは飼い主がラクで良いですよ。
レーザーポインターは猫じゃらし以上に食いつきが良いのでオススメ!
また、高い場所に登れるキャットタワーの設置や、安心して隠れられるダンボール箱を用意するのも有効です。ストレスが減ることで、トイレ以外の場所で自己主張をする必要がなくなり、自然と粗相が収まるケースも多々あります。



いっぱい遊んでスッキリしたら、ぐっすり眠れるんだね〜。
いろいろな対策をしてもトイレに行ってくれない場合は



ここまでやってもダメな頑固な子もいるよな。そういう時はどうすれば良いんでぇ?
中には、どうしても特定の場所(素材)への執着が消えないケースや、保護猫などでトイレトレーニングが難しいケースもあります。
実は猫田助でも、いろんな対策をしても改善しない子がいて、そういう性格なのだと割り切ってトイレでさせることを止めたケースもあります。


おかげで知識がつきました。ありがとう。
今回はその対応を付け加えておきます。
粗相をする場所にトイレシートを置く
「ここでしたい」という猫の意思が固い場合、まずはその場所ですることを認めてあげるのも一つの手です。
よく粗相をする場所にトイレシート(ペットシーツ)を敷き、そこでさせます。


褒めもしませんが、怒りもしません。トイレシートのみ置き、黙々と掃除するようにしたらそこが定位置になりました。
布団や、洗濯物の上でやられるよりはマシ…という考え方ですが、改善できない場合は妥協案を出すのも大事かと思います。
一日一枚使うことになるので、できるだけ安いトイレシートを使いましょう。



無理やりやめさせるより、私たちの『ここでしたい』って気持ちをうまく誘導してくれた方がスムーズだわ。
物理的に行けなくする
寝室の布団で粗相をするなら、寝室に入れないようにドアを閉める。留守番中はケージを活用する。


かわいそうに思うかもしれませんが、飼い主さんが疲弊して猫を嫌いになってしまうより、物理的に隔離して失敗を防ぐ方が、お互いにとって幸せです。
この場合は人間の家族間ルールのほうが大切となります。特に小さい子は扉を開けっ放しにすることが多いので、ルールを徹底、定期的な見回りをしましょう。
通路自体を塞ぐなら、脱走防止フェンスが役立ちます。



失敗できない環境を作ることは、僕たちを『叱られる恐怖』から守ってくれることにもなるんだよ。
排泄場所に食事を置く
猫は食事をする場所で排泄することを本能的に避けます。いつも粗相をしてしまう場所に、あえてフードボウルやおやつ皿を置いてみてください。
「ここはトイレじゃなくて、ご飯を食べる場所なんだ」と認識を変えさせることができます。



おいしい匂いがするところではできないよね〜。
まとめ:トイレ以外でおしっこ・うんちする対策は根気強く!



トイレのしつけは根気が必要なんだね。



きれいなトイレと楽しい遊びがあれば、オイラ毎日ハッピーだよ〜。



とにかく臭いを消すことが大事よ。



アンタが本気で環境を整えてくれるなら、猫ちゃんだってちゃんと応えてくれるわよ!
K.Mさん、そしてここにたどり着いた読者の皆さん。トイレの悩みは一朝一夕には解決しないこともありますが、原因を一つずつ潰していけば必ず光は見えてきます。
関わっていくことが苦痛に感じることもありますが、それも猫さまと一緒にいるからこそ生まれるコミュニケーションです。猫との対話をしつつ、かけがえのない時間を過ごしてみてくださいね。
それでは、今回も猫田助完了!





















